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苅萱道心筑紫イエヅト 下巻
カルカヤドウシンツクシノイエヅト
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長野市
1880
明治13年
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柳水亭 種清/著
リユウスイテイ タネキヨ
18
ここに牧の方という重氏の奥方がいた。九年前に石堂丸という若君をもうけ、夫重氏が禁裏御所警護の任で京在番中、筑前国の留守を護っていた。今回、夫の任期が終わるにあたり、夫を迎えに、また京見物のため、筑前国から京へ上り、姉の小路の館に滞在した。今日は花見の酒宴のため、千鳥の前と諸共に桜の花を見、二人睦まじく盃を重ね歌を詠じ、すごろく盤を台にして一睡の夢を結んでいた。 かかる折、重氏御所より帰還し、眠る姿を見ると、牧の方も千鳥の前も二人の黒髪真っ逆さまに蛇の如くふり立て、あきれて言葉もなき心地となった。重氏、この有様を見て、外面は菩薩の如く、内心は夜叉の如く、仲良き体も心の底は邪気執念に燃える証拠をおのれと顕し浅ましき体たらく。重氏、裏門よりそっと立ち出で、髪を切り、行方も知れぬ身となった。かくとも知らぬ監物太郎は、「わが君いましまさず、烏帽子、狩衣脱ぎ捨て、御髪に一通の文を添え残された。二人の女性もこれを見て「わが君遁世とは、何故の御出家ぞ、泣くに泣かれぬ状況」となった。主人を追う二人の姿を見て、監物太郎は「もはや、止まり給うまじ。残し置きたる御遺書を見たまえ。その文言に「浅ましき浮世を感じ出家する。国に残した石堂丸を育て上げ加藤の家を継がせよ」と。これを見て牧の方いよよ嘆いたが、監物太郎泪を抑えて「殿のことは嘆いても詮方なき事、一大事はお家の跡目若君の身の上、殊さら隣国には大内義弘がいる。主君、遁世のことを押し包み、帰国を許されたときは、例の如く重氏ご帰国と世上に見せかけ、御台様に殿の装束をさせ一時も早く国元に御供して下るべし」。これを見て、千鳥の前も共にとあるを、監物太郎押し留め「お前様には大切な形見がある。あれなる鎮守の扉を開けてみよ」と鍵を与えた。千鳥、鍵を開けると縄を掛けられた兄の鬼蔵人がおり、重氏暗殺の使命を大内義弘に頼まれてと申すや否、「こと兄でも観念せよ」と不意打ちをかけ、留めの一刀を刺した。これを見て、牧野方の御台様もいたわり、今は互いに心も解け姉・妹なりと血脈を結び筑前に引き去った。 それはさておき、ここ九州に天にも登るが如き横雲将軍といわれる人物がいた。勅令と称して近国の大名から、その家々に伝わる宝物を奪い取ろうとしていた。加藤の家からは夜光の玉を奪おうとしていたが、知勇の家老監物太郎は、のらりくらりとこれを拒み、とにかく日を延ばしていた。 さて、進藤左衛門が一人娘に夕しでという娘がいた。傾国の姿に、大将大内義弘色々と口説けど聞き入れず、わけてこの娘天照大人の神供の女と言いふらし、頭に白羽の征矢を挿していた。これは男子には身を汚さぬという印であった。加藤の使者の監物太郎が入って来たのを、義弘が見て、夜光の玉の催促をした。監物太郎、家に伝わる玉女神は国を守る神であるから、たやすき者には渡さない、として悠然として帰っていった。 ここに又、監物太郎の弟に女之助という者がいた。九州一の美男子で、家中の女を多くタブらかしたのを、兄監物大いに怒り、勘当していたが、今日の御国の祭礼に諸人を御殿に入れ、その隙に女之介も入り、勘当を侘びるに至った。かかる時、監物太郎が大内家から帰り来て、家宝を差し出さないよき思案はあるまいかと思いをめぐらし、辛うじて玉を渡さずに済んだのだった。 さて、御台様牧の方は我が君加藤重氏は高野山におわすことを聞いたので、石堂丸を連れ、女之助を供にして高野へと向かった。女之助、天性好色なれば牧の方に言い寄ったが断られ、腹を斬るはめに至った。女之助にかわり牧の方と若君を護るは、玉や与次という、かって渡しで刀を貰い受けた人物であった。 かかるとき、大内義弘の一統が攻め寄せ、加藤重氏とその息子を差し出せと迫り、玉や与次の獅子奮迅の働きに辛うじて阻止できた。 牧の方と若君、今は出家の加藤重氏を求めて高野山へと急いだ。しかし、牧の方はなれぬ旅の心労に病に伏す身となった。若君は高野を目指して急げども、御父とは早くに別れて顔も知らず、父加藤重氏は今や刈萱道心と名を改めて出家の身とはなっていた。 知らず知らずに両者は対面とはなったが、刈萱道心名乗ることは出来ずに、もどかしさを覚えた。石堂丸、父とは知らず母君の「命あるうちに父と一目逢わせたい」とする嘆きに、つい吊られて下山する石堂丸に、つかず離れずの道行きとはなった。牧の方は高野の女人堂まではたどり着いたが、夫と子とに会えず息は絶えた。石堂丸は嘆き悲しんだ。刈萱道心そこへ転び入り、初めて回向をし、口に称名、心には死したる妻に詫びいった。折りしもそこに駆けつけた玉や与次は、ふと刈萱道心を見れば、「おひさしや重氏様ではありませんか」と。これを見て石堂丸は「なつかしや、こいしや」と縋りつけば、道心、衣の袖を打ち払って逃げようとした」。そのとき、後ろから「わが君」と声をかけるは監物太郎であった。太郎、「勅命を受けて大内との一戦に打ち勝ち、大内を生け捕りにした、いかがしたら宜しいか」との声に道心「それが生殺は計らいがたし。いでや奏聞をとぐべし」と申し、一件は落着した。 この刈萱道心の話は、永く高野に言い伝えられている。
下巻
N930/22/2
不明
小林鉄次郎
1880
18丁
淫水亭,種清,淫水亭主人,桜沢堂山,八功舎徳水,智俊,能晋輔,八功舎徳水,恋川笑山,淫水亭開好,玉廼門
インスイテイ,タネキヨ,インスイテイシュジン,サクラサワドウザン,ハッコウシャトクスイ
1907
1
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県立長野図書館